生まれたこと
生きることに疲れたら

生まれたこと

　気がついたときには、私はもう、人間としての人生を送りはじ
めていた。自分が生まれることによっていまここにいて、しかも
ものを考える存在だと気づいたのは、生まれてから何年もあとの
ことだった。
　気がついたら、私は生きていた。

　この世に生まれることが、仮になんらかの意志によって導かれ
たのだとしても、少なくともそれは私の意志ではない。
　「よし、いっちょ生まれてみようか」などと思って生まれてき
たという記憶はない。
　だが、私はいつの間にか生まれて、生きていて、そうしていつ
かは死ぬことになっている。

　死は、失敗することもあるが、それを自ら選んで望み通りに
死んでいく人もいる。いつか死ぬという運命に逆らうことはでき
ないが、この世にいる間の意志で死に急ぐことは可能だ。

　それにひきかえ、生まれることについては、自分の意志とは
また別のところで操作されているような気がする。
　だから、与えられた命を自ら絶つことは、その謎の意志のような
ものに逆らうことになるかもしれないし、そのため「自殺はいけ
ない」だの「命は尊いもの」だのという考えが出てくる。
　私も、「命は尊い」というのはかなり真理に近いような気がして
いる。
　誰がそう決めたというわけでもないのに、多くの人々は「どう
やら命は尊いんだ」と思い、たいていはそれを信じて疑わない。

　理論の短絡です。「謎の意志」にとってはそうかも
しれないが勝手に製造された貴方にとってはどうなの
でしょう？
　もちろん、養豚場のブタが皆自殺を始めたら経営者は
困るでしょうし、経営者にとって「ブタの自殺はいけない
こと」であり、「ブタの命は競りで儲ける為に尊い」の
です。ブタの精神が安定するように経営者は精神安定剤
入りの餌をやり、あたかもブタを愛しているかのように
話し掛けてブタを安心させる。
　何処かで聞いた話によく似ていると思いませんか？
　多くのブタは屠殺上で殺されても自分の生存目的は
自分の為の物では無かった事など知りはしない。
　「信じるブタは救われる」、少なくとも真実の恐怖からは。
〜clomaさんのメールより

生きることに疲れたら

　すべてのエネルギーを使っても、ようやく自分の生命活動を維持
しているだけ。
　こんなときは立っていることすらできなくて、横たわってただ
ぼんやりしている。いつまでも。
　そうして、ただ時の過ぎるのをひたすら待っている。
　明日か、あさってか、一週間後か、もっと先かもしれないけど、
私の心を攻撃してくるものどもが、そのうち退散するその日をただ
待っている。

　そんなにも傷ついているときは、逃げたくても逃げ道を知るエネ
ルギーすらないに決まってる。だから、無理に逃げようとしても
無駄なのだ。
　無理矢理逃げたつもりが、ますます不本意なところへ向かって
いるだけだったりする。

　傷ついたり疲れてしまったときは、ほかの何をするエネルギーも
なく、ただため息をつきながらでもじっと横たわっているのがいち
ばん楽。
　やがてはじっとしていることにすら飽きてくる自分のことを、
私が一番よく知っているはずだから。

　横たわってじっとしているのは、実際に体がそうしているときも
あるけれど、心だけがそうしていることだってある。
　たとえば人と一緒に仕事をしていたって、心だけは横たわって
じっとしているってことはある。

　いずれにしても、私のことは、誰かが何とかしてくれるという
ことはあり得なくて、多少人の言葉や何かがきっかけになることは
あっても、あくまでも自分の力で傷を癒やしたり、力を蓄えたり
するしかない。
　そうでなければ、自分の人生を自分の足で歩いていないのだ。

　残されたすべての道に、たとえ針が敷き詰めてあったとしても、
しばしの休憩をした後には、私は必ず自分の足で、針を踏みながら
でも先へ行きたい。
　その先には「針を自分の足で踏んだことのある私」がいるはずだ。

　積極的に無力感を応援し、「あたかも外界が四方八方
（正確には六方）暗闇、自分は真っ黒でがらんどうの人形、
しまいに境界の消え、すべて闇」とイメージし続けると
さっぱりします。
〜clomaさんのメールより